2018年度助成団体を紹介します【都内:寄り添いを考える会】
皆様の寄付により2018年度草の根助成団体に選ばれた団体を紹介しています。今回は、食を通じた不登校生の安心安全な居場所づくりを行う「寄り添いを考える会」です。
寄り添いを考える会について
みなさま、こんにちは。
寄り添いを考える会の紹介文を読んでいただきありがとうございます。代表の広田悠大です。
当団体は「困難な状況に置かれた子ども若者たちの命と心を守るために、子ども若者たちに寄り添える大人を増やし、誰もが相互的にサポーターに成り合える社会づくり」をミッションに掲げ、講師を招いた寄り添い研修会の開催や寄り添いを必要とする子ども若者たちの声を社会に伝える活動等を行うことで、みなさんの寄り添いのヒントになる活動や困難な状況に置かれた子ども若者たちやそのご家族に寄り添う活動を行っています。
私は不登校経験者であり、大学生の時に不登校生支援のボランティア活動をしたことで広く「寄り添うとは、どのようなことだろう?」と考え、各分野で当事者に寄り添い、活動をされているプロフェッショナルを講師にお招きし、『寄り添い』とは何かを探求するための集まりとして2016年より発足しました。
活動を重ねる中で、私たちのすぐ近くにも、いじめ、不登校、引きこもり、多文化共生、外国籍その他の理由により、困難な状況に置かれた子ども・若者たちが大勢いることを痛感しました。彼ら彼女たちの多くは、人知れず息苦しさを感じて身もだえしています。第3者から見たら問題であっても、当事者にとっては問題ではないということが多々あります。困難な状況に置かれ、生きづらさを抱える子ども若者たちやそのご家族・ご親族の声に寄り添う形で、当団体は活動の幅を広げてきました。
子ども若者に限らず、社会のひずみを体感している人ほど、何が問題であるかがわかっていて、社会を変えていく力があると私は思います。現在ある制度に子ども若者たちを無理やり合わせることで生きづらさを抱える子ども若者たちを増やすことなく、子ども若者たちに寄り添える大人を増やし、生きづらさを抱える子ども若者たちの側に制度を引き寄せるための1つの機会や制度のはざまにあるさまざまな活動を実施できるよう、当団体は近い将来の法人化を目指しています。
「9月1日問題」について
ところで、みなさんは「9月1日問題」という言葉を聞いたことがありますか?
「9月1日問題」というのは、夏休み明けに前後に18歳以下の自殺率が急激に増加する現象のことを主に指します。この問題の根拠となっているデータは内閣府が平成27年版自殺対策白書にて発表した「18歳以下の日別自殺者数」です。この白書によると突出して自殺者数の高い日が「9月1日」です。過去40年間の18歳以下の累計日別自殺者数は、9月1日(131人/年間1位)、9月2日(94人/年間4位)、8月31日(92人/年間5位)と夏休み明け前後の他、春休みやゴールデンウィーク等の連休等、学校の長期休業明け直後に自殺者が増える傾向があることがわかります。
「9月1日問題」に対する1つの提案
子どもたちが自ら命を絶ってしまう理由はさまざまあると思いますが、学校の長期休業明け直後に自殺者が増える傾向ということに限って考えると、共通して「学校」が要因の1つであることは想像に難くありません。では、もし自死を選んでしまった子どもたちに不登校が容易にできる環境があれば同じ選択をしていたでしょうか?
違う結末が待っていたかもしれません。私たちが学校や家庭内で起きている個々の問題に直接介入することは難しいことです。しかし、私たち大人が困難な状況に置かれている子どもに対して「逃げても良いよ」「学校以外にも君の居場所はあるよ」と声をかけることで救われる命が確実にあると考えます。
不登校の現状
文部科学省が発表した平成28年度の問題行動・不登校調査では、1千人当たりの小中学校の不登校(年間の欠席日数30日以上)児童生徒数が、調査を開始した平成10年度以降で過去最多の13・5人(前年度12・6人)に上ったことがわかりました。また、不登校の要因で一番多いのは、「家庭に係る状況」となっています。ここから推察されるのは多くの不登校生は本来、各家庭で育むはずの生きていくのに必要なスキルを習得できない可能性があるということです。
不登校の子どもたちに安心安全な居場所を、学校が辛い子どもたちの駆け込み寺を
当団体では、これまで支援活動には取り組んでおりませんでしたが、当団体の様々な活動を通じて、多くの不登校や引きこもり状態にある子ども若者やその経験者と繋がってきました。
当団体に繋がる不登校経験者の子ども若者たちからは、「不登校」という同じ境遇を経験した仲間と定期的・継続的に繋がることのできる場所が欲しいという声が上がっていました。
また、当団体が拠点を置く町田市近隣の不登校生を持つ保護者の方やご親族の方々からは、不登校の子どもたちに安心安全な居場所を創ってほしいというご要望をいただくようになりました。
さらには、『命と心を守るために、「学校」か「死」かという選択肢の間には「不登校」というもう一つの選択肢があっても良い』ということを提案している当団体としても、学校が辛い子どもたちの駆け込み寺となる居場所を創ることは、当団体の責務であると考えるようになりました。
食育を通して自立を促す
家庭環境に不登校の要因があると私たちの生活の基盤である衣食住に問題がある可能性があります。
衣食住の中でも、「衣」は安価なアパレルブランドの台頭により、「衣」で困ることは少なくなりました。「住」は、行政や専門機関に繋ぐことで解決することができます。「食」は、生命を維持するためにも欠かせないものですが、不登校生に限らず子どもたちの食事には、個食や過食・絶食、偏食、塩分過多や脂肪過多など栄養バランスの悪さ等の課題が指摘されています。それに伴い食文化も薄れつつあり、雑煮などの伝統食を知らない不登校生も多くいます。
子どもたちが栄養バランスのとれた食事の方法を知り、調理の方法を学ぶことは、自立を促す機会の1つになります。居場所活動で仲間たちとともに作った料理をふるまい、「おいしいね」「よく作れたね」と認められる経験は、自己肯定感を育むことにも繋がります。
不登校生食堂 ~食育を通じた不登校生の安心安全な居場所
不登校生食堂は、学校に通っていない子どもたちや学校が辛い児童生徒のみなさんを対象とした食育を行うための教室であり、不登校生や不登校経験者のための居場所です。
食堂といっても提供された料理を食べるのではなく、調理師や栄養士の指導を受けながら、調理に取り組むことで食事作りのスキルを習得するほか、座学と献立作りや買い物などの体験を通して、栄養バランスの取れた食事の大切さを学びます。
不登校生の多くは、学校に行くことに強い不安感がありますが、行かないことへの罪悪感にも苦しめられています。同じ境遇にある不登校生や不登校を経験したことのある仲間たちと、自分たちが作った料理を一緒に食べることで親睦を深め、絆を強めることもできます。
また、不定期にご家族やご親族、不登校を理解し不登校生の応援をしたいと寄り添ってくださる方々に、仲間と一緒に作った料理をふるまう他、テーブルマナー教室や餅つき大会など、保護者やご家族・ご親族も一緒に楽しめる「食」を軸にしたイベントをスタッフと一緒に企画します。
病気やアレルギーなどで、一律に同じものを食べることが辛いお子さんは、管理栄養士や薬剤師の資格を持つスタッフのアドバイスを受けることもできます。
さらに、不登校生食堂では、「福祉」や「食」に関する国家資格を持つスタッフがチームを組み指導・監修にあたることで、学校が辛い子どもたちを不登校生食堂に繋いで下さる方にも安心を提供するとともに、当団体に繋がる不登校や引きこもり経験のある若者たちや専門的な資格を持つスタッフが不登校生食堂を訪れる子どもたち一人一人に寄り添い、伴走します。
所感
この度、草の根市民基金・ぐらんの助成をいただき、当団体としては新規事業となる「不登校生食堂」を始められることを関係の全ての皆様に心より感謝申し上げます。
市民の皆様のお心にも寄り添い、不登校生食堂を社会に還元できるよう努めてまいります。
今後とも、当団体を見守り、寄り添っていただけるようお願い申し上げます。