2018年度助成団体を紹介します【アジア:NPO法人アクセプト・インターナショナル】

皆様の寄付により、今年度は特別にアジア2団体に草の根助成を贈ることが決まりました。そのうちの1つ、NPO法人アクセプト・インターナショナルを紹介します。


私たちはテロリストやギャングをはじめとする紛争当事者を受け入れて彼らの脱過激化と社会復帰を支援することで、テロや紛争の解決を目指すNPO法人です。2011年以降、世界で発生する紛争の約40%以上にISISやアル・シャバーブをはじめとするイスラム過激主義者が関与しているとされています。私たちは過激主義者が「テロリストではない選択肢」を選べるように支援することで、従来の和平プロセスの構築をはじめ政治レベルで解決の難しい紛争の解決モデルを築くことを目指しています。

アクセプト・インターナショナルの活動は、紛争地・ソマリアをどうにかしたいと考えた大学生により2011年に開始されました。現・代表理事の永井が2011年に早稲田大学に入学後、アフリカを訪れながら世界の人道危機を調べている際に、「ソマリアは現在、『世界最悪の人道危機の状態』から『想像もできない比類なき人類の悲劇』へと変貌している」という国連の緊急プレスリリースを見つけました。ソマリアでは当時、飢饉と紛争が起きており、すぐさまソマリアに対して何かできることをするべく様々な国際協力団体に問い合わせましたが、あまりに危険すぎるとのことでどの団体もソマリアでは活動をしていませんでした。

ソマリア首都モガディシュの様子。イスラム過激派組織アル・シャバーブが南部ソマリアの大部分を支配しており、ソマリア政府はアル・シャバーブに「戦争宣言」を発出。文字通り紛争状況にあります。

最もいじめられている人がいることを理解しておきながら、危険なので何もできない現状を目の前に、ソマリアが最もいじめられている国なのであれば、見てみぬふりをするのではなくて、リスクや自分の未熟さを踏まえてでも今・ココでできる最大限をやるべきだと考えたメンバーのもと、2011年9月、ソマリアに特化した唯一のNGO「日本ソマリア青年機構」が設立されました。設立当初は、ソマリア人紛争孤児の留学支援や、スポーツ用品提供などしかできませんでしたが、2013年9月からは学生だからこその強みを活かして、同年代のソマリア人ギャングたちと対話の場を創り、彼らを脱過激化して社会復帰させていく事業を開始しました。テロ組織からリクルート対象となっていると同時に、劣悪な治安の主原因であるソマリア人ギャングたちを、同じ若者として変えていくことは、大人たちにはできなかった学生団体だからこそできることでした。

ケニア首都ナイロビのソマリア人居住区で治安悪化の原因・テロリスト予備軍のギャングを対象としたプロジェクト。同世代の若者だからこそ同じ目線で対話をして彼らを仲間にしていきます。


2018年3月、ナイロビ3大ギャンググループの1つである「カリフマッシブ」の全構成員を受け入れ完了し、解散式を実施しました。

そして2017年4月、今度は大人として一定のスキルセットを持って「ソマリアをどうにかしたい」「紛争を解決したい」との初心に立ち戻る中で、真正面からテロと紛争の解決に挑むため、NPO法人「アクセプト・インターナショナル」が設立されました。テロリストをはじめとする紛争当事者を「受け入れる」姿勢を軸に、彼らの脱過激化・積極的社会復帰にこそ、未だ解決のモデルがないテロと紛争の問題解決の鍵があると分析し、活動を実施しています。

 

私たちの考える紛争解決の解決モデル。和平プロセスが難しい暴力的過激主義者が絡んだ現代の紛争に対して、暴力的過激主義から抜けださせる(脱過激化・積極的社会復帰支援事業)と暴力的過激主義者にさせない(過激化予防)の2つの活動を軸に活動しています。

 

■今回の助成を受けて実施する活動について

活動地はインドネシア中部ジャワに位置するスラカルタです。東南アジアに位置するインドネシアはその人口規模を背景にASEAN地域の経済を牽引しており、800以上の日系企業が進出する日本とも関わりの深い地域です。また、世界最大のイスラム人口を抱える国でもあります。

インドネシアと聞いて「テロ」「紛争」をすぐに思い浮かべる方は多くはないと思いますが、地元テロ組織とイスラム国の繋がりが指摘されるなど、アジアにおけるグローバル・テロリズムの接合点としての顔も持ちます。1993年設立のジェマ・イスラミア(JI)がインドネシアのテロリズムの大元ですが、指導者アブ・バカル・バシルの拠点、中部ジャワ・スラカルタではラスカー・ヒスバ(RH)と呼ばれるJIから分派した過激派組織とイスラム国の繋がりが指摘されています。

2017年より3回程度の現地視察を重ねる中で、現在は2015年前後に一斉逮捕されたラスカー・ヒスバなどのテロ組織メンバーが釈放されつつあるが、彼らの社会復帰がうまくいっていないこと、そして内面の過激性は服役を経ても変わっていないケースが散見されることが明らかになってきました。インドネシアの過激主義者は、他の地域と異なり経済社会的な事情ではなく、純粋な宗教心や内面の過激性が高まっている例が散見されています。

そこで私たちは、元テロリストへの経済的支援を実施する現地NPO・LKLKとも協力し、これまで取組が不足していた、①彼らを受け入れるコミュニティとの和解と、②彼らの内面的な脱過激化/再過激化予防に取り組むことで、刑務所から釈放された元テロリスト約50名が脱過激化し、彼らを取り巻く社会との和解を促進して社会復帰を実現することを目指します。また、同時に現地NPO・LKLKに対して能力強化研修も実施することで、現地で継続的に活動が行われることを目指します。今回の助成では、日本人専門家の渡航3回を軸としたセッションの実施運営の費用に充てさせて頂きます。

ジハード主義そのものを批判するのではなく、テロという行為によって問題解決がなしうるのかに焦点を当てて議論を進めます。

最後に一つ、私たちが昨年プレ実施を行った際のエピソードをお伝えさせて下さい。元テロリストの一人アグスは「世界で迫害されているイスラムの同胞を救いたい」との強い思いで活動に参加した、ジャマ・イスラミアの一員として活動しており、2015年6月にインドネシア当局により逮捕されました。

セッションの様子。元テロリストと社会側の代表が真剣に臨みます。

私たちのセッションに参加した当初は警戒していましたが、日本人専門家がフラットな距離感で、「ではテロ組織に参加することで問題は解決できたのか」「できなかったのであればどうすればよかったのか」との質問を軸にセッションを進める中で、段々と私たちや社会側の代表者とも打ち解けていきました。社会側の代表の一人であるキリスト教の司祭が「私はイスラム教の考え方も学びたいと思っている」と発言して下さった時には、目に涙を浮かべながら、社会への考え方の変化を述べて下さったのが印象的でした。

目に涙を浮かべる参加者も。

私たちのインドネシアでの活動ははじまったばかりで規模も小さいですが、現地の必要性を確かに捉えている自負があります。ぐらんや支えてくださる日本の市民の皆様の思いもしっかりと背負って、活動に当たっていく決意です。最後になりましたが、この度は大切な資金を託して頂き誠に有難うございます。どうか末永く、今後ともよろしくお願いいたします。

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