「見た目問題」ってわかりますか?MFMSの外川代表は問いかける。アザがあったり、ヤケド、キズなどの症状を抱える人たちが外見が重視される社会の中で生きづらい思いをしている。機能的な問題はなくとも、普段の生活や就職において外見がハンディになることが多いのが現実。そんな「見た目問題」の重要性、多様性、深刻さに対する社会の理解を広めたい。そんな思からMFMSはスタートした。
■明確なコンセプト
MFMSは問題を考える、というよりは、ゴールにむけて社会に対してアクションを仕掛けていくタイプの団体だ。主要な活動は、1)「見た目問題」についての理解を広める広報活動、講演活動など、2)当事者や関係者のネットワークづくり、3)セミナーや情報提供による当事者の人たちへのサポートである。
ぐらんの助成金は年に数回開催されるイベントに活用されている。具体的にはどのような企画があるのか、外川代表にお話をうかがった。(2009年9月)
■目指すものは情報センター
「11月8日に大阪でオープンミーティングを開催します。ぐらんの助成金を使っています。参加費無料で当事者の皆さんをおよびしてシンポジウムを行う予定です。赤あざや白斑(白いあざ)、アルビノ、脱毛症など当事者の方々と、研究者の方をお呼びしています。当事者の方がパネリストとなり、自らの経験や対処法などを語ってもらうことにより、悩んでいる人にヒントを与えることができればと考えています。」
これらのイベントでは、だいたい参加者の7〜8割は当事者か、その家族や友人といった関係者で、そのほかはNPOの活動に関心のある人や、マスコミ関係者が集まるという。興味深いのは、シンポジウムや当事者団体の紹介に加えて、”エピテーゼ”という人工ボディやかつらを実際に手に取って見ることができる企画があることだ。当事者の方の社会生活を後押ししたいという、MFMSの気持ちがうかがえる。
「小さなお子さんが当事者のご両親がイベントに参加されることがあります。たとえば、生まれた子どもが当事者だった場合、多くの場合、産科では知識として症状を説明することはできても、その先のサポートができない。すると、親は行き場を失ってしまいます。そんなときに、とりあえずアクセスしたら「こんな患者会がある」「こんな対処法がある」といった情報を得ることができるセンターを作りたいのです。」
だからMFMSのイベントは、センターはまだ存在しないけれど、その「実写版」のようなものと外川さんは表現する。こうした活動は後に情報誌に落としこみ、そこからさらにネットワークを広げていっているのだという。
■誰もが自分らしい顔で自分らしい生き方を
主催する講演やオープンミーティングなどのほかに、大きなイベントへの参加や、ラジオ出演もこなすなど外川さんの活動は多岐にわたり、その様子は、MFMSのホームページ、ブログでこまめに紹介されている。MFMSはポスターやパンフレットなども洗練されていて、メディアをとてもうまく使いこなしている。その意図するところを外川さんはこのように説明してくれた。
「若い人を意識しているところはあります。HPを作る際も、自分たちでやるのではなく、Wii等のゲームも手掛けているWeb制作会社にお任せしました。特に若い人には『見た目問題』を知ってもらいたいし、それが難しくもあるので、彼らにヒットするように考えています。」
もちろんMFMSでは年齢に関係なく多くの人をサポートしているが、とくに人間関係や就職で困難に直面する若い当事者や、見た目が人間関係にダイレクトに作用しがちな若年層にアピールすることには意味があるだろう。
まず「知る」こと。そして思いやりの気持ちや他人への理解を育んでいきたい。そんなMFMSの願いの先にあるのは、特定の誰かではなく、「誰もが」暮らしやすい社会なのだ。
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