草の根市民基金・ぐらん

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若い世代向けの女性の人権ワークショップ開発プログラム

団体名 アジア女性資料センター
助成金額 2011年度 / 47万8,500円
団体概要

 暴力のない公正で持続可能な社会をめざし、国境を越えてて活動するフェミニスト団体です。女性の人権・ジェンダー平等を実現するために、フェミニスト視点の情報を発信し、女性運動と社会運動、日本と世界の運動をつなぎます。また、女性に対する暴力や差別をなくし、変化を起こすために、ワークショップやイベント、緊急アクションや中期的キャンペーン、政策提言やロビーイングを行っています。若い世代同士で、身近なジェンダーの問題について話し合ったり、イベントやトレーニングなどの活動をしているユースグループも活発に活動しています。

助成事業

 若い世代が、人権とジェンダーについて深い理解を備えて社会運動に携わっていくためには、上の世代から一方的に教わるのでなく、同世代と共に学び活動する経験が効果的である。そこで、若い世代の女性たちのネットワーキング活動を支援し、人権とジェンダーに関するトレーニング機会を保障するとともに、若い世代向け参加型ワークショップの開発・実施を通して、リーダーシップを育成する。

実施内容

 第1に、2011年度から開始した20代〜30代前半の若い女性たちが、身近な人権やジェンダー問題について気軽に話し合うことのできる空間作り「ジェンダーカフェ」を継続して実施する。
 第2に、若い世代の視点からジェンダーと人権について学ぶ連続セミナーを開催する。
 第3に、これらの活動から学んだことをもとに、若い世代自身が同世代を対象に、ジェンダーと人権についてわかりやすく楽しく理解を深めるためのワークショップ教材を開発する。プログラムには制作チームのメンバーから4名に、連絡調整等の作業担当のプログラム・コーディネーターと、ワークショップの制作アシスタントを担ってもらい、非営利団体での職務経験を積みリーダーシップを育成する機会を提供する。

<具体的な活動内容>
●2012年4月
◎ワークショップ制作チーム募集、第1回WS制作ミーティング
 ホームページやSNS(Facebook、Twitter)でワークショップ教材の制作メンバーを募集し、集まったメンバーで第1回ミーティングを行った。
●2012年6月
◎「ジェンダーと人権」連続セミナー第1回「『完璧な身体』という強迫−映画『イリュージョニスト』監督エレナ・ロッシさんを迎えて」(6/7)
 ◆講師:エレナ・ロッシーニさん ◆開場:東京ウィメンズプラザ ◆参加人数:20名今や女性だけでなく、少女や男性にも向けられるようになっている「より美しく、より若く」というメッセージ。美容業界は理想的な身体のイメージをどのように作り出し、売り込んでいるのか、映画作家エレナ・ロッシーニさんに、作成中のドキュメンタリー映画『イリュージョニスト』についてお話をうかがった。
◎「ジェンダーカフェ」第1回「『カレシいる?』から始めない/始まらないわたしたちの生き方」(6/25)
 ◆ゲスト:若林苗子さん ◆会場:かまいキッチン(下北沢) ◆参加人数:9名セクシュアリティをテーマにジェンダーカフェを開催。友達と会話するとき、とりあえず「カレシとどう?」と恋愛の話を始めようとする/されることや、旅行や映画などレジャー関係によく見る「カップル割引」、雑誌で組まれる女と男の「カップル特集」など、「女なら男とカップルになって当然」という考えについて参加者がどう感じているのか話し合った。職場、友人、家族など、日常の様々な場面で私たちは一対一の恋愛を迫られている。「カップルって幸せ」というメッセージにあふれた若い世代向けの雑誌を見ながら、異性愛主義や結婚のプレッシャーについて考えた。
●2012年8月
◎ジェンダーカフェ」第2回「着たい服きている?〜わたしたちの見た目の選び方〜」(8/27)
 ◆ゲスト:野ざらしマリーさん ◆会場:かまいキッチン(下北沢) ◆参加人数:10名わたしたちの日常に広がる「女らしさ」や「見た目」をテーマに「ジェンダーカフェ」を開催。主にファッションやメイクを切り口に、若い女性に期待される見た目の問題について話し合った。「男からのまなざし」、「周りにいろいろ言われても着たい服がある」など多くの意見が交わされた。
●2012年10月
◎「ジェンダーと人権」連続セミナー第2回「沖縄の基地と女性の人権」(10/17)
 ◆講師:比屋根麻里乃さん ◆会場:渋谷区女性センターアイリス ◆参加人数:9名沖縄の基地と女性をテーマに、沖縄タイムスの若手記者である比屋根さんを招いてセミナーを開催。沖縄の現状と米軍基地周辺で起こり続けている性暴力被害の実態を学んだ。この勉強会で学んだ内容は、12月8日にユースグループが取り組んだ女性に対する暴力がテーマの「Fashion Resistance to Militarism ファッションショー2012」での「沖縄の基地と女性」セクションで活かすことができた。
◎「ジェンダーカフェ」第3回「きょうのご飯、誰がつくるの?みんなの家事の分担、教えて!」(10/23)
 ◆ゲスト:白崎朝子さん ◆会場:かまいキッチン(下北沢) ◆参加人数:6名家で掃除、洗濯、食事を作るのは誰か。生きていくために必要な家事をどうやって分担したいと思っているかをテーマに開催。「女は家事」「男は仕事」という固定概念が根強いことへの怒りや違和感を話しました。性別役割分業は決して「家庭」のなかだけの話ではなく、女性が仕事の場にいてもぶち当たる壁だということも確認した。
●2012年11月
◎「ジェンダーと人権」連続セミナー第3回「ジェンダーカフェ特別版‐ちかん最悪!わたしたちは悪くないってこと話そう」(11/27 )
 ◆ゲスト:西野恵子さん ◆会場:かまいキッチン(下北沢) ◆参加人数:5名好評だったジェンダーカフェを特別版という形で、連続セミナーの一環として開催。被害に遭っても「スカートが短いから」「あなたに隙があったから」と女性のせいにされたりと、2重の被害を受けることもある痴漢犯罪という性暴力。かなり多くの女性が被害にあっていることがわかり、性暴力を女性個人の問題にされないために、また被害を話せずに傷がよりいっそう深くなってしまわないように、どんなことができるかについても話し合った。
●2013年4月
ワークショップ教材完成

成果と課題

アジア女性資料センター <助成金によって得られた成果>
 2011年からスタートした「ジェンダーカフェ」は、今回の助成金を通じて、さらに多くの女性たちに日頃感じている問題は実はジェンダーと深くかかわっていることを伝えることができた。最終回まで全体で述べ25名の参加があり、大学生、大学院生、会社員、アルバイト、無職、公務員などこれまでにない多様な層の参加があった。これまでの「ジェンダーカフェ」に参加してきた女性たちが中心になり、テーマを選び、進行を考え、当日ファシリテーターを務めることで、今後、市民活動に参加するための実践的な経験を積むことができた。「ジェンダーカフェ」への参加をきっかけにして、アジア女性資料センターの活動に関わる女性たちが増えたことも大きな成果と言える。参加者からは、今後も継続して開催するなら自分たちも企画に参加したい、という声もあり、今後も継続することができる事業となった。
「ジェンダーと人権」連続セミナーは全体で述べ34名の参加があった。いずれの企画も若い世代の視点から企画されたもので、参加者もこれまでにアジア女性資料センターのセミナーなどに参加したことのない層が半分以上となった。様々なテーマを女性の視点から見てみることで、これまで知らなかった性差別やジェンダー問題に気づくことができたと感想をもらっている。エレーナさんをお迎えして、お話を伺った回は、対象を若者に絞らずに開催したので、さまざまな年齢層との意見交換の機会となった。
 ワークショップ教材開発には、1年を通して述べ17名が関わり、目標としていた、これまでにない若い世代の視点からジェンダーと女性の人権を学ぶ教材を完成することができた。この教材を使って今後はワークショップを開催したり、ホームページ展開することで、更に多くの若い世代にジェンダーと女性の人権について学ぶ機会をつくる基盤となる。教材開発には、学生のネットワークや他の若者が活動している市民団体にも声をかけたので、これまでアジア女性資料センター以外で活動していた若手活動家や学生たちも集まり、今後継続して共に活動を展開していけるネットワークが広がった。
全体のプログラムには述べ70名以上が参加し、特にこれまで女性運動に関わった経験のない、新しい層である若い世代へのアプローチが成功したと思う。また、このプログラムには幅広い世代、国籍、仕事、活動などに係わる方たちに協力を得ることができたので今後の活動に役立つネットワーク構築につながった。また1年の活動を通して、ユースグループの活動自体も広く周知する効果があった。SNSやホームページでの活動参加の呼びかけは、反響も大きく、今後もこの経験を活かして、新しい層へのアプローチを行っていくことができるようになった。

<今後の課題>
 この1年を通して構築されたネットワークを活かし、今後の若い世代の市民活動を広げていくことが課題となる。今の若い世代の多くが、様々な問題を抱えていると日々感じている。活動に参加する経済的な余裕や、時間的余裕、また心の余裕もない人が多いので、今後は、そんな人たちともつながり、活動を発展していくことができればと考えている。そのためには、若い世代が今後も活動を続けていける、基盤づくりが必要である。資金面では、教材を使ったワークショップを開催したり、大学などでの出張授業も受け付けたいと考えている。また他団体との共催でセミナーなどを企画したい。賛同者の寄付金や助成金の獲得努力も続け、金銭的にも持続可能な活動としていきたい。
 今回の活動の参加者は、現在も継続してアジア女性資料センターの活動に参加するメンバーや他の市民活動に参加する人たちもいる一方、その後の活動に必ずしもつながっていない参加者もいるので、フォローアップ活動の機会を提供し、継続的に市民活動にかかわりをもってもらえる環境を作ることも課題である。
 今回の活動経験を活かして、若い世代が中心となって企画・運営する活動を市民社会全体に増やしてゆく努力も継続していきたい。

2013年度の活動予定

●社会変化を生み出すフェミニスト運動づくり
(1)札幌での会員総会関連イベントの開催
初めて会員総会を札幌で開催する機会に、北海道の女性運動・市民運動とネットワークするため、5/18(土)午後に、北海道で活動する6人の女性をパネリストにシンポジウムを開催し、同日夜に交流会を開催する。また機関誌にも詳しい報告記事を掲載する。
(2)ユースグループ
@「ジェンダーと人権」ワークショップの開催
昨年度制作したジェンダーワークショップ教材を使って、ジェンダーと人権について学ぶワークショップを、若い世代の社会人・大学生を対象に開催する。
A「ジェンダーカフェ」の開催
若い世代の女性および男性が、身近なジェンダー問題について話しあい交流する場として「ジェンダーカフェ」を開催する。「ジェンダーカフェ」はこれまで20〜30代の女性を対象に開催してきたが、今後は同世代の男性を交えながら共に考えるための新たな取り組みとして開始する。
Bインターネットを通じた意識啓発・ネットワーキング活動
若い世代の男女を対象とするジェンダー問題に関するウェブページを立ち上げる。主にジェンダーについてのワークショップ教材の内容をアップする予定。
(3)障害をもつ人との活動の促進
2012年度に実施したワークショップをもとに作成したリソースブックの広報・普及を行う。また、リソースブックをもとに、障害を持つ人と活動した経験のない団体を主なターゲットとしてワークショップを開催する。ノートテイクボランティアを募るなど、ワークショップの内容をアジア女性資料センターの主催事業において実践する。
(4)運動づくりに関する活動
国内外の運動の経験や手法を共有する機会として、セミナー、ワークショップを開催する。

●女性の人権・女性に対する暴力
(1)16日間キャンペーン(11/25-12/10)
女性に対する暴力について、特に若い世代を対象に意識啓発を行うため、ユースグループによる「女性に対する暴力」ファッションショーを開催し、女性に対する暴力に関心をもつ若い世代をさらに増やす。
(2)国際女性デー(3/8)
日本におけるジェンダー平等の課題についてプレスリリースを出し、海外メディアを含めマスメディアや一般に意識啓発を行う。
(3)国連人権規約審査に関わる活動
社会権規約審査(5月)の結果をジェンダー視点から広報し、日本のジェンダー政策の課題についてメディアや一般に知らせる。

●出版事業
(1)日本語機関誌『女たちの21世紀』No.74〜77発行
(2)英文機関誌『Voices from Japan』No.28発行

●その他
「アジアの平和と女性の人権」、「税・年金・ケア」プログラムについては、勉強会やセミナーの開催を通して、引き続き活動を展開していく。

 

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