草の根市民基金・ぐらん

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子育てネットワークいとでんわ/被虐待児の救出を第一とするシステムの確立

団体名 日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオン(JUST)
助成金額 2010年度 / 50万円
団体概要 家族間暴力、性暴力、児童虐待など様々な要因から生じた心的外傷を負いながらも人生を生き延びてきた生存者たちが、同じ傷を持った生存者と出会う場所として機能し、知恵と経験を分かち合い、相互の回復と成長を図る為に、毎日の様に電話相談や各種テーマミーティングを行っている。分化テーマは現在週に24種。また月2回の講習会やワークショップを行い、毎年春にはほぼ全会員が全国から集まるフォーラムを都内で、また夏には合宿型サマーセミナーを避暑地で開催している。
助成事業 日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオン(JUST)「子育てネットワークいとでんわ」:子育てに困難を感じている母親たちのための相談事業・研修事業・研究事業・情報発信事業

 弊団体がすでに手がけている、妊娠・出産に不安を持つ母親たちの相互扶助ネットワーク「赤ちゃんの舟」の姉妹プロジェクトとして企画され、子どもの虐待が悲惨な結末を迎える前に、虐待が地域や社会に発見され、事態が収拾され、被害者・加害者ともに然るべき治療につなげられるような有効な社会資本としてのシステムを整えることが本事業の趣旨である。
 児童相談所などの公的機関の活動内容について、現行法下における限界を冷静に見極め、ある時はこれを監視しながらも、またある時は連携することによって、官にできないこと、民にできることを考え、被虐待児の救出を第一とするシステムを確立すべく、育児や児童虐待の専門家を招いてシリーズで研修会を開き、同時に当事者たちへの聞き取り調査を行う。
実施内容
  • 2011/04 官民を問わず、すでに児童虐待防止のために有効な取り組みをしている諸団体に協働要請を発する。同時に、弊団体が持つ IT リソースを対象者たちが利用しやすい形態へと改築。
  • 2011/06 子育てに困難を感じている母親本人たちによるネットワーク「マザーボード」を組織し、これを電話相談員としてホットラインを設置。
  • 2011/08 子育てに余裕がなく虐待のリスクが高い家庭のためのレスピレーショナル・ケア(呼吸ケア)を群馬県みなかみ町にて実施。
  • 2011/09 育児や児童虐待に関する専門家を月 1,2 回のペースで招聘し、シリーズで研修会を開始。
  • 2012/03 本事業の成果物を文字または映像媒体により社会へ発信。
成果と課題 <助成金によって得られた成果>
 本助成事業は、2011年3月の東日本大震災の発災のため、多難な船出となった。なぜならば、本事業に従事する予定だったスタッフが乳児子育て中のため、多数、東京を離れる事態となり、社会的人心も余震や放射性物質の拡散への不安に揺らぎ、本事業を計画通り開始する外的要因がまるで整わなかったからである。そのため、開始時点において事業の実施規模をかなり縮小することを考えざるを得なかった。
 しかしながら、同年6月には本事業の一部である相談事業分野、すなわち子育てネットワークいとでんわの受け手であるマザーボードを、当初の予定より若干縮小しつつも新たなメンバーで再編成し、子育てに困難を感じている女性たちのための無料電話相談事業を開始した。弊団体のこれまでの調査から、本事業の対象者・当事者となるような子育て中の母親たちは、片腕に乳児を抱きながら通信することが多いため、パソコンやスマートフォンよりも携帯電話の使用率が、社会的平均値に比べて高いことがわかっていた。そのため、本事業の広報活動の媒体として設定したホームページやブログも、携帯電話で利用しやすい形態へと改築した。
 本事業はやがて、姉妹プロジェクトであり、妊娠や出産に不安を持つ母親たちのための社会事業「赤ちゃんの舟」と、電話相談事業において協働することとなり、ここで子育てネットワークいとでんわの相談事業部門を赤ちゃんの舟ホットラインとして改編した。
 弊団体によるこれらの活動の概要は、専門家や一部メディアの注目するところとなり、母子精神保健に関する専門誌、診断と治療社刊「月刊 チャイルドヘルス」2011年8月号や、NHKの複数の番組(「おはよう日本」「ハートをつなごう」「首都圏ネットワーク」)取材班による取材を受けた。
 同年9月には当初の計画通り研修事業を開始し、月1〜2回の頻度で育児や児童虐待の専門家による研修会を実施し、本事業の実行部隊であるマザーボードのみならず、一般にも公開した。講師以外の専門家たちも一般客として参加することが多く、充実した講演活動ならびに活発な議論が行われた。

<今後の課題>
 本事業は、2011年 2月の申請時においては、クッション・ハウスをはじめとして、海外ですでに試みられている子育て支援の方法論を、日本にも導入することにかなりの比重を割いていた。しかしながら、その直後の東日本大震災の発災において、日本は他の先進諸国が経験していない社会環境を持つこととなり、その結果、いわゆる災後社会日本のあり方を模索することと、本事業も無関係に遂行することができなくなった。逆にいえば、それでもなお申請時の方向性に拘泥するならば、利用者のための社会事業ではなく、事業のための事業になりかねない状況となった。
 そのため事業が進行するにつれて、海外からの制度の移入よりも、現在の日本に独自の方法論を模索すべき必要性が発生し、弊団体が東日本大震災直後に開始した自助グループ「post311(ポストさんいちいち)」と緊密な連携を取るにより、子育て中の母親たちの放射性物質への不安をケアすることなどが直近の課題となった。
 このような経緯から、一年間を経過した今、東日本大震災後の母子保健活動というものを、新たな枠組みを作って考えていく必要を、課題として感じている。また弊団体は、当該事業とは別の活動として、発災後まもなくから、宮城県南三陸町において、多方面に亙る被災地支援活動を行なってきているが、そこでもまた、不自由な避難生活において、母親が母親であるがゆえに直面するさまざまな問題を、被災者たちから多数じかに聞き取っている。こうした声の中には、今後の日本社会の行く末を占う貴重な提言も多く、東京直下型地震の接近が警告される中、首都圏を中心とした日本社会における未来の子育てに、それらをどのように活用できるかを考えることが、新たな課題であると思われる。
2012年度の活動予定 「子育てネットワークいとでんわ」とその姉妹プロジェクト「赤ちゃんの舟」、ならびに宮城県南三陸町における被災地支援活動の発展継続。

 

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