草の根市民基金・ぐらん

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二ヶ国語による戦争体験の記録ブックレット制作および草の根交流事業

団体名 ブリッジ・フォー・ピース
助成金額 2009年度 / 50万円、2010年度 / 50万円
団体概要  戦争体験を含む「過去」そして「現在」「未来」と向き合い、アジアを中心に多様な文化背景や異なる価値観との間にかけ橋を築き、国境を越えて多様な世代とのつながりをもち、平和な社会を実現することを目的とする。
 主にフィリピンと日本の戦争体験者をビデオメッセージでつなぐ活動を行ってきた。現地でも徐々に信頼を得ることができ、国内では多様なバックグラウンドを持つ方々と「つながり」を築く上映会や交流会を行っている。
助成事業 二ヶ国語による戦争体験の記録ブックレット制作および草の根交流事業。戦争体験の記録がほとんど残されていないフィリピン・ルソン島南部で、当事者に聞き取りをし、交流しながら二ヶ国語による戦争体験の記録ブックレットを制作。
実施内容  BFPでは、2005年からルソン島南部の方々と交流を深めてきました。1945年2月末、米軍に追い詰められた日本軍が自暴自棄になり、この地域でたくさんの虐殺事件が起きたと聞きます。しかし、それらの話は当事者に聞いて明らかになるものばかりで、現地では当時亡くなった方の名前や人数が記録として残っていないばかりか、まとまった証言集のようなものもありません。当時のことを語れる方々が高齢化する中記憶をどう残していくかという焦りも感じられますが、日本と異なりその日暮らしが精一杯であるという現状のフィリピンにおいて、記録に残すという動きは生まれそうにない現実があります。

 そこで、ルソン島南部に特化した戦争体験のブックレットを、現地パートナー団体の協力を得ながら作成することで戦争体験を二カ国協働で記録していきたいと考え、本事業を実施しました。英語と日本語両方対応可能なブックレットにすることで、日本国内でも広く伝えられ、共通の歴史認識が可能となります。これまで築いてきた関係性の中から、戦争被害者の方にさらに掘り下げた取材を実施し、この地域で何が起きたかということを一冊のブックレットとして描きだしました。
 そして、そのブックレットを糸口にした、さらに深い草の根交流を目指して活動しました。

ブリッジ・フォー・ピース ■2010年度(秋と春の2度にわたってフィリピンを訪問)
  • 記録ブックレット制作会議
  • 取材テープ起こし・翻訳
  • ブックレットラフ案作成
  • フィリピン・パートナー団体との内容検討
 2010年度は、秋と春の2度にわたってフィリピンを訪問し、当時を知る方々から貴重な証言を得ることが出来ました。話を伺う過程やその後のフォローなどを通し、草の根交流に努めました。その結果、2度目の訪問の際に、より具体的で詳細な話を伺うことが出来るなど、大きな成果を残すことが出来ました。

 また、ブックレットを制作する意義についても、現地フィリピン人から高く評価を頂く事が出来ました。本助成を頂いたお陰で「二ヶ国語による戦争体験の記録ブックレットを制作する」という目標が明確になり、BFP内部のみならず、フィリピン人・パートナーにも大きな相乗効果をもたらすことが出来たのは、大変喜ばしいことでした。お世話になっているアレックスさん(戦争遺族)は、現地邦人向けの新聞取材に対し、「フィリピン人はすぐに忘れる。しかし、日本人が記録を残そうとしている事に希望を覚える」とコメントしてくださいました。本事業によって、これまで以上の信頼をフィリピンの方々から寄せて頂けるようになったのは、大きな成果といえます。

ブリッジ・フォー・ピース■2011年度(2度のフィリピン訪問・ブックレットの完成!)
  • 記録ブックレット制作会議
  • 取材テープ起こし・翻訳
  • 取材内容の確認
  • ブックレット印刷
  • ブックレット発送
  • 出版記念の集まり開催
 証言者の皆さまは私たちの度々の訪問を快く受け入れてくださり、本当にありがたく思いました。言葉の問題もあり、なかなか聞きたいことが聞けないもどかしさがあったり、インタビュー内容を掘り下げられない点もあったかもしれません。それでも、何とか完成にこぎつけられたのは、ご協力くださった証言者の皆さまのお陰です。  その一方、証言内容を確認しに再訪した際、すでに他界されてしまったことがわかった証言者が3名もいらっしゃいました。とても悲しく思いましたが、それと同時に、当時のことを知る方から直接お話を聞くことの出来る最後の世代であるという自覚を改めて強くすることとなりました。
成果と課題 <助成金によって得られた成果>

 まずは、何と言っても形としてブックレット『忘れてほしくない 私たちの声』(英語題:Unforgettable Voices)を世に出すことが出来たことに尽きます。BFPのような小規模組織にとって、今回ご支援を得られたことは本当に大きな効果がありました。心よりお礼申し上げます。
 また、ブックレットが出来たことによる「草の根交流」も、さらに広がりを見せることが出来たと確信しています。それは、証言してくださった方々との関係は勿論のこと、このブックレットを届けることが出来た全ての人々との関わりにおいてそう感じています。
 繰り返しになりますが、日本の戦後世代がブックレットを制作するという行為そのものに対する評価も頂き、信頼を増してくださった方もいたようです。聞き取り取材を続けてきたルソン島バタンガス州リパ市の市長さんにも、ブックレットを差し上げる機会を作ってくださった支援者も現れたほどです。

 さらには、これまでBFPメンバーが墓標もない荒れ果てた虐殺現場を訪れる度に 「このままでは忘れ去られてしまう」と危機感を覚え、何か出来ないかと現地フィリピン人に訴え続けていました。当初は「虐殺現場はたくさんある。一箇所だけ作ったら、他の地域にも…といわれてしまうよ」とあきらかに乗り気ではない様子であしらわれていました。
 しかし、ブックレットを制作するなどの過程を経て、相手の対応も少しずつ変わってきたように感じます。特に、今回完成したブックレットを持参した際には、作成する墓標案まで描いてくださいました。きっと、当初は私たちが思いつきで言っていて、本気ではないと思っていたのかもしれません。このように信頼を得られるようになったのも、こうして形あるものを作成できたからこその効果であると感じています。

<今後の課題>

■日本国内で…
 今回、ご支援いただいたお陰でブックレット(95ページ)を完成させることが出来ました。内容が大変重たいものなので、読みやすさを第一優先に考え、カラーページを多くしたことで、当初の予定より若干少ないですが600冊を本事業で作成させて頂きました。
 成果物を有効活用するために、今後この冊子を用いたワークショップの開催等も検討していきたいと考えています。実際にフィリピンへ行く機会に恵まれなくとも、日本にいながらにして情報を共有していくことで、その内容を広げてゆくことが今後の課題です。

■フィリピンで…
 成果物であるブックレットを活用しながら、今後どのように交流を深めていけるのかじっくりと模索していきたいと考えています。特に、今回証言いただいた虐殺事件の現場には、墓標がない場所がほとんどです。次のステップとしては、何らかの形で過去に起きてしまった事件を、フィリピン国内でも語り継いでいく仕組みを一緒に検討していけたらと思っています。

 そのことが、日本の戦後世代として出来ることではないかと考えています。私たちが出来ることは、両国の間に「平和の懸け橋」を築き、相手の立場に立って2度と同じ過ちを繰り返さないように努力し続けることだと考えています。ブックレット完成を契機に、さらなる関係構築を進めていくのが今後の課題であるととらえています。
2012年度の活動予定 ワークショップの開催
  • 昨年度は20回の開催を目標に掲げ、「過去の戦争を知り、未来のかたちを考えるきっかけをつくる」をミッションに掲げたワークショップを開催しました。今年度も変わらず実施していきたいと考えています。
  • 2012年度は特に、作成したブックレットを活用したワークショップの開催、及び学校教育現場でのワークショップに力を注いでいきたいと考えています。
フィリピン・ツアーの実施
  • 毎年、虐殺が行われた2月を中心にツアーを行っています。今年の参加者は、来年もぜひ行きたいと意欲的です。また、大学生の参加希望者もあります。
  • よって、2012年度も例年通りフィリピン・ツアーを実施します。その際、ブックレットの活用は勿論のこと、どのように関係性を掘り下げてゆけるか模索しながら、進めていきたいです。

 

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